目次
電池
ポストリチウムイオン電池に興味が沸いたので、電池についていろいろ調べてみる。
日本は電池技術に関しては世界トップを誇っている。
電池技術関連特許出願数、日本が世界トップ(全体の3分の1以上が日本)
日本の電池産業が危機的状況にある。
https://youtu.be/T3lxYdV95Qs?t=790
日本が全個体電池に選択集中した結果、3年後には存在価値がなくなってしまっている。このままでは全個体電池が実現するまえに消滅してしまう。
地域別生産能力推移(GWh/年) | ||
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国 | 2020年 | 2025年見込み |
日本 | 22 | 39(+17) |
米国 | 47 | 205(+158) |
欧州 | 66 | 726(+660) |
中国 | 182 | 754(+572) |
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池とはプラス極にリチウム金属酸化物、マイナス極に炭素を使い、電解質を充てんした仕組みの電池です。
名前が似ているリチウム電池とは違いリチウムイオン電池は繰り返し充電して使える二次電池となっているのが特徴、小さくて大容量の電力を蓄えられることから携帯電話やノートパソコンのバッテリーとして使われています。
デメリット
- 充電に時間がかかる
- 他の電池に比べると高価
- 温度変化(高温や低温)に弱い
- 過充電や過放電にとても敏感
- 短絡の異常発熱により発火・発煙により爆発や火災のトラブル
- 長時間充電を満タンにしたまま放置しておくと劣化する
- リチウムとコバルトはレアメタル
リチウムは南米のチリやボリビアに偏在しており、地球の地殻成分の0.002%しかありません。
コバルトの主要産出国はコンゴ民主共和国で採掘には児童は動員されているとの指摘、出来るだけコバルトを使わないコバルトフリーというトレンドになっている。
東芝は2020年11月19日、マイナス30℃でも運用できる水系リチウムイオン二次電池(以下、水系電池)を世界で初めて開発したと発表した。電解液に水を用いる電池で、外部要因で火災が起きた際にも安全なのが特徴だという。
種類
一口にリチウムイオン電池と言っても様々な種類があり、正極、負極、電解質の材料の組み合わせによって性能が変化する。一般的に普及しているものを大雑把に分類すると次のようになる。なお、添加剤の工夫や電極のコーティングなどによっても性能や安全性は向上するため実際はより複雑である。
リチウムイオン二次電池#種類 - wikipedia
リチウムイオン電池の代表的なのは下記の3種類
- NMC(ニッケル、マンガン、コバルト)
- NCA(ニッケル、コバルト、アルミ)
- LFP(リチウム、鉄、リン)
正極 | コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、マンガン酸リチウム |
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負極 | 黒鉛、チタン酸リチウム、ハードカーボン、チタネイト |
電解質 | 炭酸エチレン、炭酸ジエチル、ヘキサフルオロリン酸リチウム |
その他 | バインダー、導電助剤 |
LFP電池(リン酸鉄系)
メリット・・・燃えにくくて安全、安い。レアメタルのコバルトを使用していないため
デメリット・・・エネルギー密度が低い
デメリットのエネルギー密度が低いも、技術革新を通じてリン酸鉄系のエネルギー密度が改善し、コスト面の魅力が相対的に高まったことが、市場シェアの急上昇を後押ししている。
アップル社が2024年までに電気自動車産業に参入かとあり、一部報道では”アップルカー”に独自に開発したLFP電池の搭載を検討していると報じられている。
改良
リサイクル
使用済み携帯電話等に含まれるリチウムイオン電池、および自動車用リチウムイオン電池製造工程から発生する廃正極材に含まれるコバルト、ニッケル、マンガン、リチウムを抽出分離し、それぞれ金属コバルト、金属ニッケル、炭酸マンガン、炭酸リチウムとして回収する
溶媒抽出技術を利用した湿式リサイクル方法は、従来の湿式処理と比較して次の特徴がある。
① コバルト、ニッケルに加えて、マンガン(炭酸塩)、リチウム(炭酸塩)も回収可能。
② 金属コバルト、金属ニッケルまで高純度で製品化(純度99.95%)が可能
リチウムイオン電池からのレアメタルリサイクル(JX金属株式会社 環境リサイクル事業本部 敦賀工場)
材料需要/価格
2020年11月現在、リチウムの価格は下落しています。
1トン:39000ドル、日本円では405万円程度です。1kg:4000円
中国のEV車はバッテリー交換式
中国のEV車はバッテリー交換式を採用している。
バッテリー交換ステーションで車を持ち上げて底部からバッテリーをはずして交換、6分弱でバッテリー交換を完了します。
バッテリーは常に新しくなるのでバッテリーによる故障がしにくい、フル充電のバッテリーと交換するだけなので、フル充電されるのを待つより速い。
電気自動車用バッテリーがサブスクに~中国から始まる新しいEVの使い方
ポスト・リチウムイオン電池
ポスト・リチウムイオン電池の本名は全固体電池となります。それ以外の次世代電池としては、一番実用化に近いといわれるナトリウムイオン二次電池は2025年頃から、金属空気二次電池、カリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池は2030年以降の市場形成を予想されています。
- リチウム・硫黄電池
- コバルトフリー電池
多士済々のポストリチウムイオン電池
「次世代リチウムイオン電池」戦争勃発、4候補のどれが有力なのか
次世代電池の開発と市場予測について調査結果を発表
スマホの電池が5日もつ、新型リチウム-硫黄電池
富士経済、全固体型リチウム二次電池を中心とした次世代電池世界市場の調査結果を発表
全固体電池(ソリッドステート電池)
電解質を液体から固体に置き換えたのが全固体電池となります。
リチウムイオン電池と同じく正極と負極の間でリチウムイオンを行き来させて充電したり放電したりするため、全固体電池のことを全固体リチウムイオン電池と呼ぶこともある。
全固体電池はリチウムイオン電池と比べて下記のメリットがあります。
- より小さな電池でより大きな電力を蓄えることを示すエネルギー密度が高い
- 高温・低温に強く冷却システムやスペースなどがなくても作動する
- 固体のため液漏れやそれに伴う発火リスクがない
電気自動車に搭載されれば、航続距離がフル充電で600キロメートル程度、充電時間は10分程度となり、ガソリンスタンドで給油している時間がガソリン自動車とそれほど変わらなくなる。
ただし、材料の探索や製造コスト低減など課題が多く、メインターゲットとされる車載用に実用化されるまでにはまだ時間がかかります。
2020年時点ではウエアラブル機器やIoT機器、半導体関連製品向けなど小型の全固体電池は量産化の動きとなっている。
種類
固体電解質は2種類ある。
- 酸化物系固体電解質(ソリッドパワーなど)
- 硫化物系固体電解質(マクセル、出光興産、日立造船)
硫化物系固体電解質は酸化物系固体電解質より高いイオン伝導性を持ちますので、より高性能な全固体電池となる可能性がある。
第1回 究極のバッテリー、全固体電池がEVの普及を加速させる
出光興産は石油会社であり、石油精製時に発生する硫黄化合物を有効活用できる。
出光興産の全固体電池【固体電解質の量産施設を2021年に新設】 -
ERESTAGE LAB
実用化
不明
- ソリッドパワーが2Ahの容量をもつ電池を2020年10月から量産開始、20Ahの容量は2021年に製品化
ウェアブル端末やIoT端末向け
- 村田製作所は補聴器用の全個体電池を2020年度下期に量産を開始
- TDKが電子基板に実装するチップ型の「セラチャージ(CeraCharge)」を2020年6月に量産化に移行
- FDKが高電圧のSMD(表面実装用の部品)対応小型全固体電池「SoLiCell」を2020年内に量産開始
- マクセルがコイン型の全個体電池(硫化物個体電解質)を2021年から本格量産
スマートフォン、タブレット端末向け
- 米カルマ社はクルマ向けに開発した電池をクルマより1~2年早くスマートフォン向けに出荷する
クルマ向け
- トヨタ自動車の開発目標値は体積エネルギー密度:400Wh/L
- ソリッドパワーが車載用電池をを2026年に出荷予定
電池種類 | 体積エネルギー密度 |
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リチウムイオン | 520Wh/L |
ニッカド | 110Wh/L |
ニッケル水素 | 195Wh/L |
鉛蓄電池 | 82Wh/L |
2020年時点で目標値自体はリチウムイオン電池よりも低い、2025年時点でも全個体電池市場は小さい、2035年に市場が大きくなる。
電気自動車のモーターの最高出力は100kW以上ある。大電流を取り出せないと電気自動車には使えない。
関連企業/研究所
- ソリッドパワー(アメリカのベンチャー企業、三桜工業(6584)が出資)
- クアンタムスケープ(スタンフォード大学のスタートアップ企業、フォルクスワーゲンが出資)
- 東京工業大学
- プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(トヨタ自動車とパナソニックの合弁会社)
全樹脂電池
APB(All Polymer Batteryの略名で造語)と呼び、部品点数が少なくて済むバイポーラ積層型のリチウムイオン電池で正負極や電解質といったリチウムイオン電池を構成する主要部材をすべて樹脂化(ゲルポリマー)したものとなります。
ブルームバーグの報道によると全樹脂電池のコストは従来より9割も減少すると説明しています。
全樹脂電池はリチウムイオン電池と比べて下記のメリットがあります。
- 安全性が非常に高い(短絡が起きても抵抗の大きな樹脂により一気に大電流が流れない)
- 製造コストが低い(製造プロセスがシンプルで工程数は約半分、設備投資の負担も軽く量産時の大幅なコストが可能)
- エネルギー密度が高く、2倍以上の電池容量を実現できる(※2倍とはエネループ(ニッケル水素電池)と比較してのことだと推測)
慶應義塾大学特任教授の堀江英明氏(元 日産リーフの電池開発者)と三洋化成工業㈱が共同開発している。
主な用途
- 定置用大型蓄電池(太陽光などで発電した電気を貯めておくなど)
- 全樹脂電池を搭載した無人航空機
実用化
2021年春までに生産設備の導入を終え、10月から量産を開始する。
関連企業/研究所
- 慶應義塾大学特任教授の堀江英明氏
- APB株式会社(三洋化成工業の子会社で全樹脂電池を量産する目的に設立)
半固体電池(ゲル状の電解液)
ゲル状の電解液を用いることで電池が燃えにくくなることや電解液が漏れにくくなるなど安全性の向上があげられる。
電解液をゲル状にするだけなので、今の設備を変えずに電池が作れる。
主な用途
ウェアブル端末やIoT端末向け
実用化
2022年度中の商品販売を見込んでいる。
関連企業/研究所
- 山形大学森下准教授
- (株)BIH
半固体電池(電極にセラミックス or クレイ)
電極にセラミックスまたはクレイ(粘土)を用いつつ電解液を採用したのが半固体電池となります。
高温実装対応と高出力・放電持続性を兼ね備えていることが特徴です。
主な用途
ウェアブル端末やIoT端末向け
家庭用蓄電池
実用化
日本ガイシが2020年9月にチップ型セラミックス二次電池「EnerCera(エナセラ)」の量産開始
京セラが2020年1月に家庭用蓄電池用のエネレッツァの販売を開始
関連企業/研究所
- 24M Techonologies(マサチューセッツ工科大学のベンチャー企業、伊藤忠商事が出資)
- フォルクスワーゲン
リチウム空気電池
空気中の酸素(正極活性物)とリチウム金属(負極活性物)が化学反応することで電力を生成する。
これまでのリチウムイオン電池は電池内に正極活性物と負極活性物を備える必要があるが、正極活性物は大気中の酸素を使用することから電池内をほぼ負極活性物が占めることができるため、コスト削減のほか、発生するエネルギー密度の大幅増につながり、その重量あたりのエネルギー密度はリチウムイオン電池と比べて5倍以上になる。
サイクル寿命が50回と短いのが欠点だが、それを改善する方法が発見された。しかし、サイクル寿命を伸ばすと電池容量を減らす必要がある。サイクル寿命と電池容量はトレードオフの関係である。
用途
実用化
2025年頃の実用化を目指す
関連企業/研究所
- NIMS-SoftBank先端技術開発センター(NISMとソフトバンク)
アルミニウム空気電池
空気中の酸素(正極活性物)とアルミニウム(負極活性物)が化学反応することで電力を生成する。
リチウム空気電池の理論容量には及ばないが、安全性が高い点や資源的に豊富で安価という点ではアルミニウムに軍配が上がる。
かねてからアルミニウム空気電池を研究していた冨士色素が、2013年に世界で初めての二次電池化に成功。今回、開発されたのが全固体型のアルミニウム空気二次電池となる。
負極にアルミニウム、空気極(正極)には炭素やチタン系などの材料を使用。電解質にはイオン液体に類似した深共晶溶媒を用い、かつ最適な添加剤を複合化させることで電解質の固体化に成功した。
関連企業/研究所
グラフェン電池
グラフェンをアノードとカソードに採用したリチウムイオン電池である。
リチウムイオン電池の基本原理と典型的な材料
グラフェンは、炭素原子が六角形構造に並んだシートで、2004年にマンチェスター大学で発見された。グラフェンは強くて軽く、表面積が大きく、熱伝導にも電気伝導にも優れている。
テスラは電気自動車に使用している。
- 発電と蓄電を同時に行える。
- バッテリー容量が大きくできる。(リチウムイオン比で45%多い)
- 充電時間が短い。(満充電まで30分)
実用化
- テスラが電気自動車に使用している
- モバイルバッテリー「Flash」(パナソニック製リチウムポリマーグラフェンコンポジットバッテリーセルを採用)
- スマホ搭載には2021年頃の実用化を目指す
関連企業/研究所
- Samsung
- 大邱慶北科学技術院
- テスラ
- パナソニック
不燃性電解液リチウムイオン電池
広く普及しているリチウムイオン電池は一般的に可燃性の有機電解液を用いており、これが火災事故の主たる原因となっている。
この電解液を不燃性にしたリチウムイオン電池が開発されている。
電解液に不燃性のイオン液体を用いたリチウムイオン電池
ナトリウムイオン電池(ソディウム・イオン電池)
レアメタルであるリチウムに代わりにナトリウムに置き換えたもの。
リチウムとナトリウムは元素の周期表で隣にある元素で、性質が非常に似ています。ナトリウムは地殻の2.8%を占めるほど豊富、海水にも含まれていて低コストで入手できます。
スマホの充電では、リチウムイオン電池が30分かかるところ、ナトリウムイオン電池なら5分で終わるぐらい速くできます。
バイポーラ型鉛蓄電池
バイポーラ構造を持った鉛蓄電池で材料コストの低減に加えて、体積あたりの容量の向上によりエネルギー密度を従来の鉛蓄電池比で約2倍に高めることでリチウムイオン電池に匹敵する充放電特性を持ち、消費電力あたりの単価は50%以下となった。
バイポーラ型鉛蓄電池には以下のような利点があります。
- 寿命4500サイクル(15年)
- 体積エネルギー密度:従来の電力貯蔵用鉛蓄電池の約1.5倍
- 重量エネルギー密度:従来の電力貯蔵用鉛蓄電池の約2倍
- 電池を複数組み合わせることにより、メガワット級までの蓄電池容量に対応
- 上位装置との通信可能なバッテリー管理ユニットを実装した電池パックで提供
- 電力貯蔵量リチウムイオン電池比でトータルコスト1/2以下
主な用途
定置用蓄電池
実用化
2021年度中にはサンプル出荷予定、2022年度から量産・製品出荷される予定
関連企業/研究所
- 古河電工と古河電池
バインド電池
CONNEXX SYSTEMS(コネックス・システムズ)社が開発している鉛蓄電池とリチウムイオン電池のハイブリッド技術「BIND Battery」
リチウムイオン電池の特徴である高エネルギー密度と長サイクル特性、鉛蓄電池の特徴である耐過充電特性と低温特性を兼ね備えた蓄電システム。
バインド電池は-30℃でも放電可能という優れた低温特性を有しており、氷点下でも設置・運用することが可能です。また、過充電時においてリチウムイオン電池は急速に発熱し、発火・爆発する恐れがありますが、その熱を鉛電池が吸収解消するようになっており過充電時の安全性が本質的に確保されています。
主な用途
定置用蓄電池(非常用小型/家庭用/産業用)
実用化
実用化されて販売している
関連企業/研究所
水系リチウムイオン電池
電解液の溶媒に水を使用している電池で、可燃性の溶媒を使用しないため安全性が向上しています。マイナス30℃の極地でも充放電が可能です。
用途
実用化
2020年代の実用化を目指す
関連企業/研究所
カルシウムイオン電池
カルシウムは地殻中に5番目に多く存在する豊富な元素、Ca2+は2価のイオンなのでリチウムイオン電池と同体積であれば容量が2倍になる。
関連企業/研究所
マグネシウム二次電池
マグネシウムは地球上に豊富に存在し枯渇の心配がない、Mgは2価のイオンなのでリチウムイオン電池と同体積であれば容量が2倍になる。
関連企業/研究所
名古屋工業大学、東京都立大学 立命館大学東京農工大学,仏ポールサバティエ大学,京都大学,高輝度光科学研究センター
用語
定置用蓄電池 | 自動車や産業機器などのバッテリーのこと 定置用蓄電池は、昨今の大規模災害の頻発による非常用電源確保ニーズの高まりを受けて、需要が増大している。 |
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鉛蓄電池 | LiBの高性能化が進む前の定置用蓄電池として用いられていた。 今でも鉛蓄電池が占める割合が圧倒的に大きいのだが、LiBの高性能化とコストダウンの進展に伴い、いずれは置き換えが進んで主役の座を譲る存在というイメージが強い。 |
重量エネルギー密度 | リチウムイオン電池は200[Wh/kg]〜250[Wh/kg]程度、数値が高いほど軽い電池となる |
サイクル寿命 | |
放電電圧 | |
充電効率 |